SyB V-1901
抗ウイルス薬
ブリンシドフォビル SyB V-1901:注射剤
概要
「SyB V-1901(注射剤)」(一般名:brincidofovir、BCV)は欧米では既承認のシドフォビル(cidofovir:CDV、本邦は未承認)の脂質結合体として新しい作用機序を持ち、CDV及び他の抗ウイルス薬と比べて高活性の抗ウイルス効果など優れた特徴を併せ持ち、広範囲の2本鎖DNAウイルス感染症(サイトメガロウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス、ヘルペスウイルス、BKウイルス、パピローマウイルス及び天然痘ウイルス等)に対して有効な治療方法となり得るものと期待されています。BCV分子の画期性は、CDVに特定の長さの脂肪鎖を結合することにより細胞内への取り込み効率を飛躍的に向上させ、細胞内で直接作用する分子に変換され高い抗ウイルス効果を発揮します。更には、CDVを初めとする他の抗ウイルス薬に比べ深刻な副作用である腎毒性または骨髄抑制を回避できる新規の高活性の抗マルチウイルス薬として期待されています。
2019年9月、シンバイオは、Chimerix, Inc.(本社:米国ノースカロライナ州、「キメリックス社」)との間で、BCVに関しての天然痘やサル痘等のオルソポックスウイルスを除いたすべての疾患について世界全域を対象として、開発・販売・製造を含めた独占的権利の取得を目的とするライセンス契約を締結しました。2022年9月、キメリックス社はエマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)へのBCVに関する権利の譲渡手続きの完了を発表しましたが、当社の取得したBCVに関する、天然痘・サル痘を含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。
現在、シンバイオは、2030年にグローバル・スペシャリティファーマを目指す事業展開を推進しており、事業価値の最大化を図るべく、造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症患者を対象として、第Ⅱ相臨床試験を実施中であり、加えて2022年5月には、腎移植後BKウイルス感染症患者を対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始しました。
また、BCVは、高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も期待されており、現在、シンガポール国立がんセンター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、米国ブラウン大学との共同研究を進めており、抗がん活性の確認及び抗ウイルス活性と合わせることによる相乗効果を確認するための試験を進めています。一方、米国の国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)/国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS: National Institute of Neurological Disorders and Stroke)との間で共同研究開発契約(CRADA)を締結しました。本契約は多発性硬化症の治療におけるBCVのEB(エプスタイン・バール)ウイルスに対する効果を検証し、EBウイルス感染を伴う多発性硬化症の患者由来の細胞を用い、インビトロ試験及び動物モデル試験を行うことによって、今後の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的としています。