キーパーソン・インタビュー
そして安定供給の実現へ
梅原 進
質問1.コロナ禍においてトレアキシン®を遅滞なく医療現場に届けてきたご苦労やエピソードなどを聞かせてください。
シンバイオ製薬の自社販売体制の基本方針は、「安定供給を前提にトレアキシン継続納入が可能であり、スペシャリティメーカーとしての流通体制を構築する」を実現することです。エーザイ社からトレアキシンの販売移管による自社販売体制のスタートでしたので、全国の卸各社へ直接訪問しシンバイオの方針を卸幹部の方へご説明させて頂きました。そして2020年9月7日にシンバイオ製薬の自社販売体制について、プレスリリースで発表するに至りました。
製薬メーカーの使命は医薬品の安定供給です。責任を持ってその使命を果たすための体制づくりを2020年11月末までに整え、晴れて12月10日から自社販売体制がスタートしました。シンバイオ製薬はスペシャリティメーカーとして取引卸(特約店)様を選定させて頂きました。自社倉庫関係についてはThird party logistics(3PL)の業者の中から医薬品に特化した物流専門受託会社であるエス・ディ・コラボ社に国内物流を依頼しています。この体制により、コロナ禍が始まっていた時期にあっても、自販における安定供給を滞りなく実現いたしました。
質問2.液剤導入やDLBCLの適応拡大等で、急激な発注量拡大が予測されるなかでの苦労やエピソードがあればお願いします。
RTD製剤(液剤)は、GDP(医薬品の製造における製造管理と品質管理の基準)において、2℃~8℃の温度で厳密に管理しなければなりません。先ほど申し上げたエス・ディ・コラボ社と連携して、工場でできた製品の品質を、そのまま医療機関と患者様にお届けするというのが使命でしたので、厳格な温度管理をしたうえで、特約店を通じて医療機関まで運んでいただくという体制構築が本当に大変な作業でした。
従来の凍結乾燥製剤は1℃~30℃の温度管理でいいのですが、先ほど申し上げたとおりRTD製剤(液剤)は厳格な温度管理が求められます。2℃~8℃の保冷倉庫で保管する必要がありますので、対応できる倉庫を急激な需要増に対してもまかなえるだけのスペースを確保することと、効率的な物流体制構築のために、全国東西2か所の物流センターを確保、予め決めた配送スケジュールに沿った運用を実現し、安定供給が可能になりました。
質問3.2022年以降の需要拡大に向けての流通体制づくりはいかがですか。
2022年のRTD製剤(液剤)の納入計画として、大幅な拡大を見込んでいますが、それに見合うだけの倉庫スペースと、作業員の方々をエス・ディ・コラボ社に確保していただきながら、安定供給に努めるという体制はもうすでにできていますので、いつ需要が増えても、万全であると自負しています。
質問4.承認されたRI(急速静注)投与ですが、流通部門としてどのように対応するのでしょうか。
RI投与は、10分間投与という形になりますので、いままで1時間かけて点滴をしていた患者さまが、10分間で終了できるということを特約店のMS様を通じてお伝えし、患者さまのメリットを薬剤部の先生方に広くお伝えしていくという形の協力体制をとっています。
質問5.目標どおり黒字化を達成したことを振り返っていかがですか。
私は2016年に入社して以来、流通業務を担当しています。シンバイオ製薬が自社販売を開始するというのは、2018年10月にプレスリリースで発表しました。それで現在の流通体制の準備を医療機関と特約店の皆さまのご協力を得ながら、2年かけて構築してきました。
スペシャリティメーカーとしての流通体制と物流体制の構築にあたっては、厳格な品質管理と迅速な流通体制が構築できたのではないかなと自負しております。
質問6.流通部門の責任者として、医療現場や患者さん、株主の皆さまに対する思いや感謝するところを聞かせてください。
医療機関の先生方に対しては、シンバイオ製薬の自社販売体制スタートに際して、いろいろな厳しい状況にご協力いただきました。非常にご理解いただき、本当に好意的に対応していただいて、シンバイオ製品への販売移管を推進して頂くことができました。
また、凍結乾燥製剤の安定供給を行う上で出荷調整に対応いただきながら、RTD製剤に切り替えていただいたことに、大変感謝を申し上げたいです。
株主さまにおかれましては、上場以来、赤字が続いたなかで、継続的な投資をしていただいて、何とか黒字収益の会社まで育てていただいたということの意味は非常に大きく、御礼を申し上げたいと思います。引き続きご支援を賜りたいと思っております。よろしくお願いいたします。