CSRの取り組み
社長対談

第3回

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第3回 確度の高いパイプラインで成長性のある経営を(早稲田大学ビジネススクール教授:松田修一先生) プロフィールはこちら
5年で上市を宣言して実現した確度の高さはすごい
松田
私の友人で、がんに3回なってまだ元気な人がいます。生存率がずいぶん長くなっていますね。
吉田
治療の選択肢も拡がってきておりますし、日進月歩で新薬の開発が進んでいます。また、その時のお医者さんとの出会いもあります。
松田
そうですね。患者さんはすべての情報を持っているわけではないですから。
吉田
患者さんは信頼関係の中で先生に委ねるわけですが、医師といえども必ずしも100%正しい情報を持っているとは限りません。それに、ドラッグラグという言葉で表わされるように、欧米で使える新薬が日本では使えないこともあります。そこをどうにかしたいということで、シンバイオ製薬を立ち上げました。患者さんにとって、なくてはならない事業だと自負しております。
松田
ただの腹痛や頭痛は少し我慢すれば何とかなりますが、がんは命に係わるので緊急を要しますね。そういう意味で、シンバイオ製薬の新薬の開発緊急度は非常に高いと思います。
吉田
一昨年に承認された非ホジキンリンパ腫の新薬のケースでは、開発に着手して5年以内に承認を取得できました。本剤は2010年12月に発売して、この1年間で既にかなりの数の対象患者さんの治療に使われました。私どもの努力が報われ、短期間で承認取得に至ることになり、私どもに与えられた使命を果たすことができたことは、非常にうれしく思います。このことが株式市場においても、もう少し評価されて欲しいという気持ちはありますね。
松田
いま、日本全体が短期志向で、イノベーションやベンチャーを育てるということが十分にできていません。特に、深く研究しなければ成果が出ないものは、それなりの時間を要します。ところが、そのようなものについても、時間的余裕のないまま評価が下されているのが現状です。バイオやナノテクでも3年くらいで成果を出すことが求められることが多いのですが、3年では何も出ません。シーズに対して、開発のステージを着実に進んでいるプロセスをきっちり評価するシステムでないといけません。
開発に成功したあとも、収益を回収できるようになるまでは時間がかかるのに、それが証券市場の評価に織り込まれません。いまの会計のルールでは財務会計がすべてです。そのため、最近、知的資本経営の評価軸として研究されている「インタンジブル・アセット」の評価ができていません。本来、日本はインタンジブル・アセットにおいてこそ、強さがあるだろうと思うのですが。
吉田
シンバイオの場合も、インタンジブル・アセットのほうがウェイトとして事業価値に占める割合は大きいのですが、どうしても財務指標のみで評価されがちです。
松田
研究開発ではなく、いま売っているものだけでビジネスをすれば、手っ取り早く利益が出るということです。
吉田
そうですね。
先日もアナリストの方にできるかぎり黒字化を早めて下さいと言われましたが、財務指標だけ見ているとそういう話になってしまいます。しかし、研究開発活動を今日限りで一切止めて、早く利益が出るようにすればいいということであれば、当社の存在意義は損なわれかねませんし、長期的な展望は望めません。投資家と経営の間に時間軸の違いがあり、経営の面で短期と長期のバランスをどう保つかがこれからの私どもの課題と言えます。